オープンワールドの最高峰、TES5 Skyrim
オープンワールドというゲームジャンルがある。
ゲームスタートからゲーム内のどこにでもいけて、プレイヤー自身が好きな様にゲームワールドを探索できるゲーム。
プレイヤーが好きに遊んでいい公園みたいなゲーム。
プレイヤーが自由に旅して回れるゲームの世界。
本当に異世界へ入り込んだかのようなプレイ感覚。
そして押し付けられた行動でなく、自分の好きに遊んでいる、という感覚。
自由。
オープンワールドのゲームの醍醐味だ。
このオープンワールドというジャンルのモンスター、最高峰の作品がskyrimだ。
正式名称『The Elder Scrolls V: Skyrim』、エルダースクロールシリーズの5作目、シリーズファンの間での略称はTES5。
シリーズの中でもTES3 Morrowindから今のような3Dのゲームワールドを自由に探索する形になった。PC版だけで日本語版もないのでPCゲーマー以外での知名度は低いが、今も色褪せることのない傑作。
その次作TES4 oblivionはPlayStation3やXbox360でも発売され日本語版もでたので相対的に知名度が高い。ご存知の人も多いはず。
そしてその続編が今作TES5 Skyrim。
TES4 oblivionを超えた完成度と内容を持つ、期待に応えてくれた正統続編だ。連番タイトルの最新作はかくあるべき、という見本のような作品だ。元々の良いところを伸ばし、質・両共に高め、よりエンターテイメントとして洗練されている。
Skyrimはとにかくオープンワールドとして圧倒的なボリュームと存在感を持つ。
例えば、高密度に配置された意味あるロケーション。フィールドをウロウロするとあなたの興味をひくものがいっぱいある。
ただの廃屋ひとつとっても調べれば廃屋となるまでの由来が見える。元の持ち主と思しき遺体があり、飼い主に忠誠を尽くし続ける犬が居たりする。錬金術師の素材を育てる畑だったりする。隠された地下が死霊術師のアジトだったりする。燃えた後だと思ったらドラゴンに襲撃されたようだと書き残しで分かったりする。
こんなゲーム的に仕込まれている地形だけが凄いのでもない。
ただのフィールド、普通の地形も同じ場所はひとつもなく(当たり前に思われるかもしれないが、ゲームである以上似た地形はコピー・アンド・ペーストで楽をして作るのが普通だ)、ただその場所その場所を眺めて回るだけでも楽しめる。冗談や酔狂でなく、本気でそれだけを楽しむプレイヤーも居る。それだけの水準だ。
さらにゲーム的な仕掛けに溢れる楽しいダンジョンが大量にある。
ゲーム内で入れる遺跡・墓所・洞窟・砦 etc. 全てがダンジョンでありこちらもひとつとして同じものはない。クエストに関係する大半のダンジョンはもとより、特に該当クエストのない小規模なダンジョンでも探索すれば由来なりゲームワールドでの意味合いなりが見えてくるようになっている。落ちている書物は単なるゲーム世界観を補強する小物の域を超えてゲームワールドにリアリティを与えている。
そしてどこに行っても見かける、生活感あふれるNPC達。
街の住人たちはそれぞれの日常を繰り返し、時間帯によって曜日によっている場所が変わりすることが変わる。隠居した老婦人は日中は街中央のベンチでのんびりしているし、引退した剣士は気がかりがあるのか街中をウロウロしている。ほとんど一日中プロバガンダに励む人もいるし、城壁の外へ畑を耕しに出かけ日が沈むと家に戻ってくる人もいる。
ひとりひとりが自分の暮らしをしている。そんなNPCたちが凄まじい数存在する。
なにせ街の中だけではないのだ。フィールドにも道行く人がいる。街に入れてもらえない獣人族の行商だったり、内戦中の兵士たちだったり、エルフの国の特使たちだったり、ひたすら陽気な吟遊詩人だったりする。
街の外で出会う連中はほんとに多岐にわたるし、山のようにあるクエストをこなしていくとそのぶん種類も増えていく。結構前にクリアしたクエストに関係した特殊な連中に再びであったりする。
あなたがこなした「今まで」の分だけ「これから」の冒険が鮮やかになる。
そんなゲームだ。
そうしてプレイヤー自身がゲームワールド内部に散りばめられている手がかりを掴みとり、ゲームワールドへの理解を進めていく。探索と推理。未知を冒険する感覚。探索しがいある世界を自由に探索して冒険に没頭できる。オープンワールドの醍醐味そのものだ。
ソレをちょっとやそっとでは消費し尽くせない凄まじい物量で用意した。まさにモンスター。
既存のオープンワールドゲームの常識を大きく超えて、オープンワールドと名乗るためのハードルを跳ねあげてしまった怪物だ。
TES5 Skyrim以後のオープンワールドは、これだけの物量を揃えない限り物足りないとの謗りを免れないだろう。
そう、今までのオープンワールドが公園なら、skyrimは遊園地だ。
単独でゲームを名乗れそうなアトラクションが敷地いっぱいに詰まった遊園地。
こんな夢の国で遊んでしまったら最後、もうただの公園じゃ満足できない。
もう一つ挙げておくべき点がある。
TES5 Skyrimは旧作と違いプレイしやすさに関して徹底的に追求されている、ということだ。
例えば今作はゲームスタート直後に決定を迫られるキャラクターのパラメータ選択、といったものはない。やれ職業を決めろだ信仰する神を決めろだ星座を決めろだ、などと突然迫られることはない。あなたのキャラクターがどういったキャラクターとなるかは、全てあなたのゲーム内での行動によって自動的に決まる。あなたが剣ばかり使えば勝手に剣で戦うのに向いた剣士になるし、弓を使えば弓兵になる。魔法に頼れば魔法使いとして成長する。見つけた石碑に触れればその星座の加護を受ける。ゲームを始めた直後のゲームについて無知の状態で何かを決定させられ、その結果を負わされるなどといったことは一切ない。
さらに、ゲームに関してまったく知識がないプレイヤーが一切のストレスを感じることなくゲームワールドを探索できるようになるところまで、きっちりチュートリアルがある。今作のチュートリアルは屈指の出来だ。さらにメインクエストを進めていけばひと通りの世界観がつかめるところまで面倒を見てくれる。
初プレイの人はとりあえず『世界の喉』といわれる山の上まで行くことをおすすめする。そこまでが長いチュートリアルだと言える。
もちろんシリーズ経験者やゲーム慣れしてる人は無視して自由にしてくれて構わない。自由な探索こそ本懐のゲームであることだし、ね。
そうそう、TES5 Skyrimはグラフィック水準の割に軽い。比較的古めのマシンでも動いてしまう。PCにしっかり資金を注ぎ込んでる向きには不甲斐ない点かもしれないが、ある程度入手しやすい非力なマシンでもプレイできるならそれだけ多くの人がプレイできる。そう悪いことでもない。とは言えゲーム機のハードとしての性能に足を引っ張られている格好だし、ゲームワールドを旅して眺めて回るだけで楽しいゲームである以上、グラフィックは良ければ良いほど歓迎される。そういう意味では少し残念かもしれない。
しかし前作TES4 oblivionまでからすると圧倒的に進歩したグラフィック水準でこれだけ軽いというのは、やはり長所と思う。
また前作で退屈だった戦闘も、システムや演出の改善で多少は楽しくなった。
アクションゲームとしては問題外なゲームであるのはTESの常だが、TES5 Skyrimではキルムーブという要素を加えそこを上手くごまかした。相変わらずアクションゲームとしてはお粗末なクリック連打で済む戦闘だが、キルムーブが発動するとカメラワークが変わりトドメ演出が入る。キャラクタもこの時だけ特殊なモーションで動くので、そこそこのカタルシスがある。ドラゴン相手だと結構派手な動きになったりもするので結構楽しめる。
と、ここまでは大絶賛の嵐だが、もちろんダメなところもある。
例えばユーザーインターフェース。コントローラーでプレイする場合はまだしも、マウスとキーボードでプレイすると控えめに言っても発狂しかねない酷いものだ。操作体系がおかしく、ユーザーインターフェイスの見た目から連想する操作で動かない様はイライラする。
さらに見た目重視にしすぎた結果、一覧性を失い利便性を損なったものになっている。装備を選ぶ時キャラクターの全身像が見られないなんてなにを考えたのかわからない改悪もある。
Modでイジれないゲームだったら大問題だったろうなホント。
あとは大味なゲームバランス。
もうこれはシリーズ伝統なので最初から期待していないけど。
今作もなかなかぶっ飛んだバランスとなっており、あらゆる敵を延々とハメ殺したりできるし、特定パラメーターだけ高めたらあっという間に無双状態になるし、攻撃魔法以外の魔法のほうが攻撃的だったりするし、ゲーム的に最適解を探して極端なパラメーターに育てたりすると、シリアスにプレイし続ける気がなくなるシュールな状態になる。
極端なことをせず、探索するまま自然に伸びるパラメーターに任せてキャラクターを育成することをおすすめする。
いかがだろうか。
確かに欠点もあるし、あらゆる人が楽しめるようなゲームでもない。
しかし、徹底的に作りこまれたゲームワールドをプレイヤー自身の判断により好きなだけ探索し調査し冒険し尽くす。それこそが楽しみだというプレイヤーには今すぐプレイして欲しい超大作だ。
ゲームの攻略情報など一切見ず、自分の力でゲーム内の疑問を探求したい。
そんなアドヴェンチャー好きにこそプレイして欲しい。
最高の冒険がタムリエルの一地方、スカイリムにて待っている。
さぁ出口を抜けて冒険へと向かおう。
【へ スカイリム】