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DTM と電子ピアノ

MIDIキーボードって必要? - 絶賛墜落中の空中遊園地

 

DTM宅録はやったことなくともピアノが弾ける、昔はやっていた、という人。パソコンやシンセはよくわからないけどピアノなら弾けるという人。ぜひDTM をやってみよう。ピアノ以外のパートを打ち込みで用意して演奏したり、ピアノソロでも市販のCD くらい音質を追い込んで曲としてまとめることができる。ほんの10年前ではプロの領域だったことが、今は個人の自宅で達成できる。知らないままというのはもったいない。

 

さて、ピアノを弾く人、弾きたい人がDTM に鍵盤を役立てるならやはりパソコンに接続できる電子ピアノが欲しくなるだろう。音を直接録音する以外に、演奏情報を音色と切り離して記録することができるようになる(MIDI という言葉、聞いたことがあるだろう)。手持ちの電子ピアノよりずっと良い出音のソフトウェアピアノ音源を使ったり、エレピやオルガンといった他の種類の鍵盤楽器はもとより、シンセサイザーのように他の楽器の音色まで使えるようにもできる。

本格的なシンセサイザーを既に持っている人はともかく、そうでない人には魅力的な話だろう。

 

DTM でピアノ弾く人が鍵盤を選定するには以下の点がネックになる。

  1. ピアノを弾くには欲しいハンマーアクション鍵盤がピアノ音色以外でじゃまになる
  2. ピッチベンドとモジュレーションが必要

まず1。

現在の電子ピアノは余程の安物以外、ハンマーアクション鍵盤という鍵盤を搭載している。アコースティックピアノの弦を叩くハンマーの動きを模しており、電子楽器のスイッチとしては不要な機械的な部分を持つ鍵盤だ。鍵盤を叩けばハンマーが動く。低音部が重く高音部が軽い。弾いた感触がハンマーアクションのものとそうでないものだと、ピアノの鍵盤として雲泥の差がある。

ハンマーアクション鍵盤は電子ピアノの最大のウリなので、各メーカーごと機種ごとにたくさん種類がある。カタログスペックと価格を並べて見比べる時、最優先で注意すべきことだ。どの鍵盤がどのくらいのグレードかはネットで探せばすぐわかるので調べてみるといい。

 

素晴らしい機能であり、アコースティックピアノとの差異が小さい高級品ほど価格が跳ね上がるハンマーアクション鍵盤だが、一つだけ問題がある。それは、ピアノ以外では役に立たないということだ。それどころか、邪魔にすらなる。

なぜか? ピアノ以外の鍵盤はハンマーアクションでもなければ重くもないからだ。オルガンやクラビネット、エレピにシンセ。全部ピアノしか弾かない人からしたらペコペコした鍵盤だ。だが、そういう鍵盤だからこそかの楽器たちはああいった演奏ができる。

ピアノとそれ以外の音色の違いだ。ハンマーアクション鍵盤はピアノの音色を鳴らすために、本物のピアノ鍵盤と同じ構造を持った鍵盤だ。ピアノ以外の音色のために作られてはいない。

アコースティックピアノを模したハンマーアクション鍵盤――アコースティックピアノを模したそれはアコースティックピアノの代替品としては優れた機能だし、鍵盤の基礎練習にもやはり向く。重い鍵盤から軽い鍵盤には対応できても逆は厳しいので。ただ、やはりピアノ以外の音色では弾きづらい。

 

 

次に2。

ピッチベンドとモジュレーションとはシンセには必須の操作子だ。キーボードの左はや左上にある二つ並んだホイール、あるいはジョイスティックを見たことがあるだろう。ない? ならカタログの写真を注意して眺めてくれ。

電子ピアノには普通、ピッチベンドとモジュレーションがついていない。シンセとしてピアノ以外の音色を弾く場合は必須の機能だが、ピアノには不要なものだからだ。

しかしシンセには必須だ。これでギターのようなベンドをし、ビブラートなどの音の変化をつける。管弦楽器なら表情をつけるのに使ったりする。弾きなれるほど無いと困る。

このピッチベンドとモジュレーション、電子ピアノには普通ついてない。ステージピアノといわれる機種ならついてるものも多いけど、プロ用だから値段も高い。

 

 

 

 

このへんのことを踏まえた上で鍵盤を選択することになる。

 

 

解決策A。

電子ピアノとMIDIキーボードを別に用意する。

全ての問題が解決するシンプルな手法。

ピアノ音色の時だけ電子ピアノを使い、他の時はMIDIキーボードを使う。

電子ピアノをハンマーアクション鍵盤のMIDIキーボードとして割り切り、音色はソフトウェアに任せるなら安めの電子ピアノで済むから、値段も特別高くはならない。

問題は、場所をとること。単純に鍵盤2つ分のスペースが必要になる。それとソフトウェアを常用することになるので、PC初心者には酷かもしれない。

 

 

解決策B。

ピッチベンドとモジュレーションがついたハンマーアクション鍵盤を用意する。

ハンマーアクション鍵盤でピアノ以外の音色が弾きづらい点は、我慢するか慣れで乗り切る。案外なんとかなる。特にあなたがピアノ弾きならピアノ鍵盤を思い通りに操るのはお手の物だろう。どうとでもなる。たぶん。

問題は選択肢が少ないこと。

単独では音の出ないMIDIキーボードで該当する商品はほんとうに少ない。マスターキーボード、もっと出してくれていいんだよ?

単独で音も出るステージピアノを含めればもう少しだけ選択肢は増えるが、こちらは結構いい値段がする。あと、ステージピアノはピッチベンドとモジュレーションの両方がついてないものも結構あるので買う時は注意。

他にはハンマーアクション鍵盤を積んだシンセサイザーを買うという手もある。やっぱり選択肢が少なく値段も高い物が多い。お手頃な物はハンマーアクション鍵盤とは名ばかりのがっかり鍵盤だったりもするので要注意。カタログを見比べて、搭載されている鍵盤が安電子ピアノと同じだったりしないか要注意。

 

 

 

解決策C。

ハンマーアクション鍵盤を諦める。

いや、冗談ではなくて。この選択肢を検討し忘れる、どころか思い浮かべそこねる人は多いんだ。ので一応、挙げておく。

本当にあなたにはハンマーアクション鍵盤が無くてはならないか、今一度検討するのも悪くない。

アコースティックピアノを弾く機会がなく、ピアノ音色以外の音色を使うことが多いなら、たぶんハンマーアクション鍵盤はいらない。生粋のシンセ弾きには「あんな重いだけの弾きづらい鍵盤をわざわざ高い投資をして手に入れたがる人の気が知れない」という人もいることを指摘しておく。

 

 

 

 

最後に。

鍵盤はやっぱり楽器なので。必ず実際に触ってから買うことをおすすめする。

カタログスペックとネットでの情報だけをアテに買うのはミスマッチの元だ。近場では目当ての機種そのものがなくても、鍵盤の種類が同じか近いものなら。ある程度のアテはつく。

ハンマーアクション鍵盤と言っても本当にピンきりで。安くても鍵盤はしっかりした機種もあれば高めでもがっかり鍵盤な機種もある。

ハンマーアクション鍵盤ではないシンセ鍵盤も同じだ。シンセとして弾きやすい良い鍵盤、というのは高級なハンマーアクションと同じくらい高かったりする。

この辺りは絶対的・客観的な指標が用意できない好みに帰結する領域だ。だからこそ、なおのこそ、自分自身でチェックすることを忘れないで欲しい。

 

 

 

PS.

ちなみにここまで音色自体の質に関してまったく触れて来なかった。

なぜかというと、現状ハードの内蔵音源より圧倒的にソフトウェア音源のほうが音がいいから。高級機種の内蔵音源は馬鹿にできないモノもあるけれど、それだってソフトウェア音源に匹敵する、くらいの意味だったりする。

PCを併用できる状況で音質を追求するならハードのほうでなくソフトウェアで解決したほうが費用対効果に優れると思う。