Rocksmith は音ゲーであり、音ゲー以上のなにかだ
ロックスミス、こいつは未来を感じるゲームだ。
本物のギター、あるいはベースを接続してプレイする音ゲー。
曲は嘘偽りなく本物そのままの、名曲たち。
おもちゃを使ったなりきりを超えた、本当に音楽できる音ゲーだ。
ロックスミスはまったくギターやベースが弾けない人でもまったく問題なく遊べるようにできている。というより、メインターゲットは楽器未経験者だろう。
このゲーム、新しいプロフィールを作って開始すると、まず楽器がちゃんと接続されているか、音がちゃんと出るかというチェックから始まる。そこできちんと接続して音を鳴らせていることを確認したら、次はチューニングをする。このチューニング部分がよくできていて、ギターやベースの初心者が最初につまづきがちなチューニングに関して、予備知識が全くない状態でもすんなりとできるまで付き合ってくれる。楽器を始める前の段階で躓くほどつまらないこともないけれど、現実にはありがちな状態。それをきっちりチュートリアルで乗り越えられるように作ってある。こういう点ひとつとっても「良いゲーム」だ。
最初のチューニングが終わると、続けて軽く音をだす課題がすぐに与えられる。画面の見方、表示に合わせてどうゆうふうに押弦して弾けばいいのか、丁寧に教えてくれる。多少躓いてすぐにできなくても、できるまでじっくり待ってくれる。自分のペースでゆっくり試せる。
そうやって最低限のことを覚えたらもうスグに曲の練習だ。
このゲームは自動で選曲された課題曲を練習してライブで演奏する、という流れを繰り返す形になっている。課題曲は最低3曲、最大8曲。すべての曲が合格点に達するとライブになる。ライブでは全曲を一気に演奏する。そうしてすべての曲が基準点を超えてればクリアとなる。そうしたらまた新しいライブのための練習に入る。
ん? いきなりライブとか無茶ぶりだ? 初心者がいきなり課題曲を与えられても途方に暮れるに違いない?
いやいや大丈夫。曲の難易度はプレイヤーのレベルに合わせて自動で調節される。どんな曲も最初の状態ではとっても簡単で、嘘偽りなく楽器経験皆無の人でも十分合格ラインを狙える水準だ。
この難易度自動調節、というのがロックスミスの真価だ。
楽器経験皆無の人がギターなりベースなりの練習を始めても、楽しい気持ちになれるまでは結構掛かる。最初は楽しくてもすぐに進歩が感じられず辛くなる。じゃあ曲練習していこうと思っても、教えてくれる人がいるわけでもない状態では初心者が曲に合わせて弾けるようになるのも難しい。
その点ロックスミスはいきなり曲に合わせて練習できる。しかも、どんな初心者でも弾けるくらい簡単にアレンジしてくれた楽譜でだ。これなら誰でも最初から楽しい練習ができる。
さらに、ちょっとでもうまくなればすぐソレに反応して難易度が上昇する。楽しんで弾いているうちに、いつの間にかアレンジも難し目に変わっていき、より複雑な演奏を要求されていくようになる。
演奏終了後に出る点数も、あなたが上達するに従って、あるいは演奏が複雑になるに従ってどんどん増えていく。
上達を実感できないなんて事態は、ロックスミスではありえない。
さらに、スライドやチョーキングといった演奏技術も教えてくれる。それも、あなたが弾けるようになってきて、こういったテクニックを身につけるべき段階にたどり着いた時に自動で教習を差し込んでくる。
あなたは細かいことをきにせず、指示通りに課題をこなしていくだけでいい。どのくらい練習したら次のテクニックに手を出すべきか、などと悩む必要はない。
あなたの準備が整っていれば、自然とロックスミスは次の課題を与えてくれる。
もちろん、ロックスミスで遊び続けるだけで、誰もが一線級のギタリストになれる、などと言うつもりはない。まったくの初心者がロックスミスで遊ぶだけで、他に音楽の知識や演奏技術を学ぼうとしなければいずれ行き詰まるだろう。
だが、逆に言えば。
ゲームをするだけで、ある程度のところまでイケてしまうということ。
あなたが単にゲーマーであり、楽器演奏に興味などなく、あくまでゲームとしてここまで楽しんだのであれば。そこで終わりにすればいい。楽しかったならソレでいいじゃん。
そしてもし。
もし、あなたが音楽の魔力に魅入られて、もっと弾けるようになりたいと願うなら。
そのままロックスミスで遊びつつ、いわゆる普通の楽器練習も並行してやっていけばいい。ロックスミスという自動難易度調整を備えた相棒は、まじめに楽器練習を始めたあなたを、引き続き強力にサポートしてくれるだろう。常に"今"のあなたに合わせた最適な楽譜で曲練習をさせてくれる。
それがどれだけ強力なことかは、これから先の未来にロックスミスで育ったギタリストがあらわれることで証明される……かもしれない。
ちなみにもしあなたが楽器経験者なら。あるいは現役のギタリスト・ベーシストなら。ロックスミスのことは大量のTAB譜がオリジナルCD付きで入った曲集とアンプシミュレータのセットだと思えば良い。
その上、練習の進捗管理を勝手にやってくれるアシスト機能付き。ゲーミフィケーションって言葉の意味を実感できる良いカリキュラムだ。難易度調整の恩恵はあまり受けられないかもしれないが、それでも例えば難しすぎるソロや早すぎて難しい部分だけ簡単アレンジがかかったりするので、それなりに役だってくれる。
ただ、リード・シートだけでいくらでも弾ける向きや、インプロで引き倒せる向きには流石に役不足だ。そのレベルの方々が試すほどの価値はないかな。
その通り、音ゲーだ。
ただの音ゲーだろうか?
違う、気づくと少し楽器が弾けるようになってしまう、最高に楽しい練習カリキュラムだ。そして、どんな初心者相手でもじっくりと相手をしてくれる先生だ。
そして、縦横無尽に弾けるようになるまで付き合う価値のある練習パートナーだ。
楽器なんて今まで縁もなかった人。
昔触ったきりで放りっぱなしだった人。
ぜひロックスミスを試してみよう。
今まで開けなかった、音楽を楽しめる世界へのドアがきっと開くから。
(2014.5/9追記)
このレビューは無印のロックスミスに対して書いたものだが。現在の最新版Rocksmith 2014でも通用する内容だ。
と言うより、Rocksmith 2014は無印のロックスミスよりも更に練習の道具として進歩している。
無印のロックスミスだと練られていなかったユーザーインターフェースの改善と、セッションモードというインプロごっこができるお手軽バックバンド+アンプシミュレーターの追加が特に大きい。
無印は正直これだけで十分弾けるようになるかというと疑問もあったが。2014ならかなりのレベルまでロックスミス2014だけで到達可能なくらい初学者がプレイした時のことを考えた作りになっている。
そんなわけで、今からロックスミスを買うならなにも考えずに2014の方を購入しよう。