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FPSのふりをしたハックアンドスラッシュ系RPG、Borderlands2

Borderlands2の話をしよう。
FPSというジャンルにハックアンドスラッシュの要素を加えたゲームと評されることが多いゲームで、プレイしてみると他にないプレイ感覚で面白いゲームだ。"ハックアンドスラッシュ要素を加えた"とある通り、敵を倒すと装備をポロポロドロップし、そうやって手に入れたより強い武器を装備しさらに戦闘に明け暮れる、と言ったゲームだ。いわゆるトレハン、が楽しいゲームといえる。
ただ、個人的にはこのゲームはFPSではない。ので、FPSだけはプレイするといったゲーマーにはオススメすべきか悩ましいゲームでもある。その辺が伝わるレビューを書きたいと思う。



Borderlands2を一言で表すとFPSライクなRPGだ。FPSと認識している人は多いと思うけど、FPSプレイヤーとしてはこいつはFPSっぽいRPGだなという認識になる。
確かに操作はFPSだ。プレイ動画やプロモーションビデオを見た人はFPSだと認識しても仕方がない。しかし実際にプレイしてみるとFPSプレイヤーとしての操作技術よりも、操作キャラクターのレベルやスキル、それから装備の性能、そちらのほうがモノを言うことがわかる。レベル差が一定以上ある状態で普通の武器を使うとたとえなんどもヘッドショットを決めても敵を倒せない。キャラクターのステータス差が操作技術でひっくり返せない以上、Borderlands2はRPGだ。
つまり、FPSプレイヤーとしての操作技術を高める努力より先に、キャラクターを育てて良い装備を手に入れてしっかりと準備をする、RPG的なプレイを覚える必要があるということ。レベル上げや装備入手のためのトレハン、そういった部分を楽しめる人――一般的にはRPGプレイヤー――にこそ向いてるゲームだ。

さらにゲームの進行も一面クリアして次の二面へみたいな形ではなく、自由に移動できるマップの上でクエストを受け解決していくことで物語が進行していくスタイルになっている。ストーリーが動いていくメインのクエストとは別に大量のサブクエストが存在し、そちらを含めてこなしていくことで広いフィールドの隅々まで探索することになる。
もちろんゲームのジャンルでもオープンワールドと名乗ってないことから分かる通り、オープンワールドとして自由にさまよえるわけではないし、また能動的にうろついて探索してまわるほどフィールドが作りこまれているわけでもない。基本的に拠点の街以外にいるのは敵だ。どこに行ってもひたすら撃ち合いをするつもりでいて欲しい。つまり、オープンワールドではなくフリーラインな任意進行のゲームだ。

レベルを上げてスキル構成を練り良い装備を整えていく点と、クエストを進めていきながら新しいマップを探索していく点、以上の二点でプレイ感覚はまごうことなきRPGだ。
操作自体はFPSなのでこの感覚は結構新鮮だ。


とは言えここまでは前作Borderlandsでも同じ。しかしBorderlandsは正直イマイチなゲームだった。前作とBorderlands2との差はどこにあるのか。



一番はフィールドの作りにあるだろう。前作ではスタート地点のマップはかなり広く、その中に沢山配置されている他のフィールドへとクエストに従って攻め込み帰ってくるというのを繰り返す形だった。これが良くなかった。同じ道をひたすら行ったり来たりしつづけ、代わり映えのしない風景をひたすら見続けるハメになる。
正直、飽きる。

それに引き換え今作Borderlands2ではスタート地点からしばらくは一本道で、要所要所でボスを倒しつつ進んでいくスタイルになっている。先へ先へと進むのでゲームが進んでいると理解しやすく、飽きがこない良い作りだ。

さらに前作ではあってないようなものだったストーリーが、今作では十分ストーリーRPGを名乗れそうな程度に組まれており、前作を上手く踏み台……いや伏線として昇華し、物語になんども山場を与えプレイヤーにある程度の緊張感と先への興味を持たせることに成功している。特に普段国産のRPGをやる向きはこの点で随分とプレイしやすくなったのではなかろうか?
ちなみに踏みd……伏線として昇華された前作のことはぶっちゃけわからなくても問題ないストーリーなのでBorderlands2をプレイするためだけに前作のBorderlandsをプレイする必要はない。


さらにゲームバランスがいい意味でヌルくなったのも良い。
前作はFPSに慣れてるプレイヤーが敵よりレベルを上げている状態でも、いい武器を入手できないと戦闘がかなり苦しかった。レベルもサクサクとクエストを進めている状態ではボスより上になることもなく、レベル上げとトレハンを兼ねた育成作業が前提のバランスだった。
それに対してBorderlands2はサブクエスト含めすべてのクエストをこなすとレベルは十分高い状態を維持できるし、クエスト報酬の武器で十分以上の性能を持つしで、事実上育成作業なしでゲームクリアまでいけるバランスになっている。ハッキリ行って長丁場なメインクエストライン、淡々とクエストをこなしていくだけでも結構なプレイ時間が必要だ。作業なしでサクサク進むというのはプレイのテンポを良くし、結果としてゲームを面白くしている。


元々の着想は良かったBorderlandsのプレイしづらさに繋がっていた要素を丁寧に修正し、誰でもプレイしやすく楽しみやすいゲームへと昇華したのがBorderlands2だと言えるだろう。



さらに、Borderlands2を語る上で忘れてはいけない要素がCOOP(オンライン協力プレイ)だ。
Borderlands2は基本的にはシングルプレイで楽しみながらクリアできるゲームだが、COOPでプレイすることでさらにおもしろくなるゲームでもある。シングルプレイで遊ぶ全てのフィールド・クエストでそのままCOOPが可能で、ホストのワールドに他の参加者が入り込んでプレイする形になる。
知り合いとはスムーズにCOOPできるし、知らない人とプレイするのもマッチングが良くできてるので問題なく可能だ。COOP可能でもマッチングが不出来だと実質的にシングル専用になってしまったりするので、こういう部分がしっかりしているのは大事だ。

他によくできていると思うのがCOOP時のバランス調整で、COOPするとなんと敵が強くなるのだ。その分ドロップも良くなるのでトレハン的には美味しい。しかしゲームの難易度自体は上がるので効率的な作業としてトレハンをするのにCOOPは向かない。ここが良く練られていると思う所だ。なぜかというと、COOPをすることで結果として難易度が下がるゲームでは得てして効率よいプレイのためのCOOPというものがはびこり、プレイヤーの間にギスギスした空気を作り出してしまうものだからだ。COOPした方がより早く欲しい結果にたどり着く、と論理的に結論付けられれば皆がそうしようとするのはもう仕方がない。しかしBorderlands2はCOOPするとむしろ難易度が上がるので効率よいCOOPをしないといけない、みたいな空気はあまりないと感じる。その分ゲームを楽しむことに集中できる。



他には、ユーザーインターフェースが見やすいのもいい。操作しやすいし一覧性もよく使い勝手もなかなかだ。
さらにPCでも破綻はしてない操作性なのもポイントだ。どうもPC版向けにマウスとキーボードで操作するユーザーインターフェースを作らない・調整しないゲームが散見される昨今、この点はPCゲーマーとして大変ありがたい。



さて、ここまでで伝わっただろうか。Borderlands2はFPS畑の人だけでなく、FPSが苦手なRPG好きの人にこそ勧めたいゲームであると。
FPSとして愉快な撃ち合いを期待すると肩透かしなバランスのゲームだから、FPSゲーマーよりRPGゲーマー向けだと思う。



ただし、クリア後にできるTrue Vault Hunter Mode(いわゆる2週目、ハードモード)は別だ。
攻撃力・防御力に関する部分に修正が入り(属性の有効性が変わる。詳しくは調べるよろし)、敵の配置も変わる。一周目には見たこともない強化された敵が出てくるようになり、属性を上手く切り替えながら戦わないとクリアもおぼつかないバランスに変貌する。
この状態ならFPSゲーマーもなかなか楽しめるバランスだと思う。
ただし、二周目以降はトレハンやレベル上げは攻略のためには必須だと思ったほうが良い。そういった意味では、一周目は壮大なチュートリアルだった、という言い方もできるかもしれない。

さらに。最近のパッチで最高レベルが上がり、3週目も実装された。正直ゲームバランスがFPSとしていいかどうか疑問な状態になっているが二周目クリア後もまだまだ物足りないと思っていた向きは終わることのないトレハンを楽しまれるといいだろう。




そんな訳でBorderlands2は、FPSのふりをしたハックアンドスラッシュ系RPGとしてオススメだし、延々と続くトレハンとシングルFPSの戦闘が好みの向きにもオススメ(その場合、本番は2週目以降)だ。
ボリュームたっぷりのゲームだしDLCも大型のものが3つ出ていてさらに後1つ予定されている。簡単にはやりつくせないゲームをお探しの向き、FPSはやったこと無いけどRPGは好きという向き、ぜひ手にとって見てはいかがだろうか?

Sacred2という傑作ゲーム

いわゆるRPGというゲームのジャンルにハックアンドスラッシュ(以下H&S)がある。
見下ろし型の俯瞰視点でプレイヤーキャラをリアルタイムに操作し、クリックで移動や攻撃をするゲームであることが多い。
が、H&SをH&Sたらしめるのはそこではない。敵を倒すことでアイテムが手に入り、そのアイテムに無限のバリエーションが存在し、優れたアイテムを求めて延々と戦闘を繰り返してしまうゲーム。
それがH&Sだ。
別にいわゆるクリック系RPGじゃなくてもH&S足りえる。ぱっと見がFPSに見えるBorderlands2というH&Sもある。



さて、いわゆるクリック系RPGなH&SにSacred2というゲームがある。
潰れてしまったアスカロンというドイツのメーカーが作ったゲームで、あちこち大味でボリュームがむやみに多くバランスが大雑把というゲーム。発売も2009年でそれなりに古ぼけてきたゲーム。



だが、傑作だ。



Sacred2というゲームの優れている点は二つ。UIと成長デザインだ。

特にUIは気合を入れすぎていて、最初に発売されたパソコン版ではパソコンゲームとしてマウスとキーボードを使って操作するゲームとして完璧といって良いUIだった。
だというのにその後発売されたxbox360版ではコントローラーでの操作に合わせて完全に作り直されており優れた操作感を持っていた。
完璧といってよいUIもプラットフォームごとに最適化しなければあっという間にごみになる。この最適化部分、サボるメーカーばかりでちゃんと機種ごとに調整するメーカーは稀だ。
そんな中、Sacred2は調整するどころかまるごと作りなおしてあるというとんでもなさだった。そんなことしてるから潰れたんじゃないのかアスカロン。かけたお金は割りにあったのか心配になるぞ。
とにかくSacred2のUIは機種ごとに作りなおしてあるレベルで完全だった。ただ操作性はコントローラーを用いるxbox360版、UIの見やすさや使いやすさはPC版にそれぞれ軍配が上がる。

PC版のUIの見やすさや使いやすさは本当に素晴らしい。
アイテム・装備欄とキャラクターステータス欄とコンバットアーツ(:このゲームにおける攻撃技)の管理欄が独立しており、一つだけ立ち上げると中央に立ち上がり同時に立ち上げると並んで表示されるという点がその一例だ。
また立ち上げた画面で大体の情報が俯瞰できるようになっていて、細かい情報はカーソルを合わせると立ち上がるポップアップで読めるようになっている。
痒いところにはすぐ手が届き、細かいところまでパッと見で把握できる一覧性を兼ね備えるこのUIは今でもPCゲームUIの最高峰だと思っている。


Sacred2でもう一つ優れている点が成長デザイン。
このゲームはとりあえず数値を増やし新しいスキルや技を手に入れていけばどんどん強くなっていく単純なインフレ構造の成長デザインになっていない。

例えばコンバットアーツ。このゲームでは伝統的なH&Sと同じで通常攻撃などは基本使わず、鍛えた使い勝手のいい技を連発して戦うのが基本戦術となる。例えばエルフなら氷の槍を前方へ扇状に放つグレイシャルスピアというコンバットアーツを連発して戦うのが基本になる。
このコンバットアーツ、覚えるため、あるいは強化するためにはそのコンバットアーツに対応するルーンというアイテムを手に入れる必要がある。アイテムなのでこれも普段の戦闘で手に入れるがそれなりに貴重で数を揃えるには少々の根気を要する。知らないコンバットアーツのルーンなら技を新たに覚え、既に習得済みのルーンなら対応するコンバットアーツを強化する。強い敵と戦うにはメインで使うコンバットアーツも相応に強くする必要がある。初心者が対応するルーンをどんどん使ってしまうのも仕方がない。
しかし前述のとおりこのゲームの成長デザインは単純なインフレ構造ではない。
ルーンを使ってコンバットアーツを強化すると、確かに性能が上がる。威力や付随効果の性能向上が得られる。しかし、それと引き換えにチャージタイムが伸びてしまうのだ。それも、劇的に。

Sacred2のコンバットアーツは全て、MPといった使うために必要なリソースを持たない。いつでも使うことができる。代わりに、一度使うと暫くの間使えなくなるチャージタイムが設定されている。チャージタイムが長いと連発できないが、一秒未満のチャージタイムなら事実上連打し放題になる。メインで使うコンバットアーツは連発できる状態に保たないとメイン攻撃手段足り得ない。
威力とチャージタイム、この二つの兼ね合いが難しいのだ。あちらを立てればこちらが立たず。

こういった要素がSacred2にはあちこちに用意されている。

例えばエルフなら氷のコンバットアーツを強くするスキルを取ると炎や魔法属性のコンバットアーツは弱くなる。
プレイヤーは自分のキャラクターを育てるに辺り、常に取捨選択の決断を迫られる。複数の技を使えるようにすれば思いもよらない戦術ができるようになるかもしれない。しかしたった一つの種類に絞ったキャラクターの戦闘力には大きく劣ってしまう、かもしれない。
スキルを取り直したりコンバットアーツに使ったルーンの数を減らしたり、といったことはできない。そのため手探りでキャラクターの成長方針を決めるのは、なかなか歯ごたえがある。


なにも考えず数値を増やせばいい単純なRPGよりずっと面白い。




ただ困ったことにSacred2、無駄に長大だ。
さまよえる世界はかなり広く、メインシナリオをクリアするまでにかかる時間も結構なものだし、あちこちにあるメインシナリオと関係ないクエストや場所をフォローしていくとあっという間に50時間くらいすっ飛ぶ。
だというのにゲームの難易度が5段階もあり、メインシナリオをクリアしないと上の難易度に挑戦できない。一番簡単な難易度より一つ上からスタートすることは可能だが、それでも3回メインシナリオをクリアしないと最高難易度に挑めない。H&Sにおける最大の楽しみは敵をガンガン倒して強いアイテムを手に入れることだから、最高難易度にたどり着かないと始まらない。しかしその最高難易度までが、ちょっと遠すぎる。難易度こんなに要らないよ。

さらに、経験値。
このゲーム、キャラクターのレベルは200が最高だが、レベルが100にもたどり着かない辺りからレベル上げが苦しくなり、150を超えると経験値ブーストの装備で全身を固めても心が折れる時間レベリングに励まないといけないバランスになっている。
レベルキャップ高すぎる。強いキャラクターに育成するスキルやコンバットアーツの取り方をすればレベルは100なくても最高難易度でラスボスを倒せるので、なおさら最高レベル200は高すぎると感じる。


さらに困ったことに大雑把なのだ、このゲーム。
コンバットアーツやスキルに、最高難易度ではどうあがいても通用しないだろうという弱すぎるもの、いわゆる”地雷”が多すぎ……いや、言い換えよう。沢山の種類のスキルとコンバットアーツが複数いるキャラクターごとにそれぞれ用意されているけれど、そのうちレベル上に苦慮しない段階で最高難易度にいける組み合わせはかなり限られ、ある程度レベルを上げればなんとかなるものでも選択肢は少ない。
これを一切攻略情報を見ないで自力攻略で見出すのは無理だよ。しかしこの手のゲームで試行錯誤をせず攻略情報を見てその通りに育成するなら面白さの大部分を失ってしまう。
明らかな設計ミスというか矛盾点だ。


なんのために優れた成長デザインを採用したんだ。しっかりしてくれ。



そんな訳で最高難易度に突入した辺りで力尽きてプレイを中断したまま今日に至る。
いや、400時間ほどプレイしたセーブデータがxbox360のHDDから消えてしまったというアクシデント(ゲームのバグ?)があったというのもあるけどね。
PC版で改めてプレイしようと思いつつインストールして動作確認した所で止まっている。Sacred2のあまりに長大過ぎるボリュームに、その物量に立ち向かう気力が再びわかない。困ったものだ。



それでも400時間が輝いていたSacred2のプレイは面白いものだったし、他にないプレイヤーに決断(とその結果)を背負わせる成長デザインは素晴らしいものだ。今でもその評価は揺るがない。Sacred2というゲームは傑作だ。

潰れてしまったアスカロンのメンバーは今は別の会社でSacred3を作っているらしい。今度は潰れないよう上手いお金の使い方をしつつ、優れた成長デザインやUIを継承しつつ、無駄じゃない範囲のボリュームを持つゲームに仕上げてくれることを願う。


アスカロンよ永遠に!