『艦これ』はカジュアルなキャラゲーの皮をかぶった本格Strategyだ
艦隊これくしょん、通称『艦これ』というブラウザゲームがある。太平洋戦争の頃の大日本帝国海軍艦艇を可愛い女の子に擬人化したキャラクターで戦うブラウザゲームだ。
……そう、ブラウザゲームである。そこまでの情報を聞いてゲーマー諸氏が感じるのは『また中身の無い”ゲームもどき”をエロ可愛い萌えキャラでつってやらせてガチャで重課金させて金を巻き上げる商売か』というものだろう。全くけしからん。
そう、それが普通のゲーマー的反応だ。自分もそうだった。
ところが、である。
観測範囲のゲーマー、特にハードコアなStrategyをプレイしている層が突如手を出し始め、どんどんハマっていくという現象が見られた。さらに課金や対人といったソーシャル要素は(ほぼ)ないという情報も得た。これで手を出さないのはカジュアル目なヌルゲーマーといえどStrategyゲーマーの端くれとしてどうかと思ったので手を出してみた。
するとすると、とんでもないことがわかる。ブラウザゲームのくせに、至極まっとうな作りのシングルゲームだったということだ。ネトゲやソシャゲのような部分はないと言っていいだろう。
しかも、結構ハードコアだ。典型的な国産RPGくらいしかやらない層が手を出したら相当苦戦するだろう、プレイヤーに戦略と作戦を要求する本格Strategy。
どうしてそう評価するのか?
それが伝わるレビューを書こう。
『艦これ』は育成要素が追加されたStrategy
艦これは擬人化された艦艇『艦娘』で敵を倒しマップをクリアして行くゲームだ。艦娘たちにはレベルがあり、戦闘をこなすなどして経験値を稼ぐとゆるやかに強くなっていく。また装備という概念があり、装備換装でより『適切』な武装をさせれば十全に力を発揮できるようになる。
艦娘を育て、より強い艦隊(このゲームにおけるパーティー)を組む。それによってより難易度の高いステージをクリアして先に進むことができる。
RPG的な『キャラクターの育成』という要素の比重がかなり高いゲームだ。
しかし、RPGのようにパラメーターを育ててより大きな数字で殴りつければ勝てる、単純なパワーゲームというわけではない。
艦これの戦闘は、現実の当時行われていた海戦を上手くデフォルメしゲームに落とし込んでいて、奥が深く細やかだ。
単なるたたかうコマンドの連打、みたいな単調な戦闘ではない。艦娘の装備や艦種、艦隊の編成といった部分をきっちり練っていかないとすぐに勝てなくなる作りだ。作戦がなければ勝てない、まごうことなきStrategy。
さらに戦闘は自動戦闘であり、とっさのプレイイングで窮地を脱出するような真似はできない。戦う前に戦いの結果はもう決まるという、かなりハードコアなStrategyだ。あなたの戦略の無さ、作戦のまずさは、即座に結果として返ってくる。
育成要素はある。だが、育成を十分すれば勝てる様なヌルいゲームではない。プレイヤーに戦略を、作戦を要求する本格Strategyだ。
『艦これ』は資源運用戦略が問われるゲーム
艦娘は資源を消費して建造するか、敵を倒した後のドロップで手に入れる。
資源というのは重油/弾薬/鋼鉄/ボーキサイトの4種類。ボーキサイト以外は3分毎に3、ボーキサイトは3分毎に1、自動で追加される。この他、遠征という要素で回収したり、課金して買い付けることができる。このゲームは明らかに課金せずプレイすることを前提にデザインされているので、資源課金は忘れて良い。
さてこの資源だが、とにかく足りない。いや、だから課金させるためにそうなってる訳じゃない。
ゲームをプレイするととにかく資源が足りずににっちもさっちもいかなくなる。建造で戦艦や正規空母といった強力な艦娘を入手しようとすれば膨大な資源が必要だ。さらに艦娘は戦闘するごとに資源を消費していく。この消費量は強い艦娘ほど増える。
この、戦闘で資源を消費するという部分が艦これのキモだ。
キャラクターの育成という比重が多いゲームでは、とにかくレベリングの効率という結論に落ち着く。これは効率的な狩場を探して、みたいなプレイングスキルの部分もあるが、最終的にはゲームにどれだけ時間を使えるかという部分の影響が一番大きくなる。24時間ゲームをし続ける(ことが仮に可能だとして)のがもっともゲーム的には正しい、となってしまう。
プレイイングスキルより投入時間量の差がゲーム内での戦力差となるゲーム。これほど馬鹿馬鹿しいものはない。
しかし艦これは違う。時間を湯水のごとく投入しようとしても、先にゲーム内で資源が尽きる。資源がないなら戦闘はできない。え? だから課金を誘うゲームなんだろって? まぁしたいならしていいけど、毎日数万円使うことになるけどいいの? 流石に非現実的だろう?
ゲーム内の貴重な資源をどれだけ上手く運用し、艦隊の戦力向上へと繋げるか。
そういうプレイングスキルの部分が問われるゲーム、それが艦これだ。
資源運用戦略が適切であれば、それがダイレクトに益となって返ってくるのだ。
『艦これ』はキャラクター収集でTCG的遊び方も可能な懐の深いゲーム
プレイし始めた頃は、艦これはハックアンドスラッシュ(ハクスラ:わからない人向けにざっくり言うと、RPGの1ジャンルで洋ゲーに多い)という印象だった。レベルを上げて敵を殴ってドロップする艦娘を集めてより強い艦隊を作る……その程度のゲームだと思った。
カジュアルの極みであるブラウザゲーでハクスラなら十分ギャップで驚く。本格的なゲームだと驚く。しかしこれは表層しか見てない誤った判断だった。先述の通り戦略や作戦抜きにまともなプレイは不可能なStrategyだった。
さておき、このゲーム資源がかつかつである以上、資源は戦闘での消費に当てるべきだ。最初はふんだんにあるように見える資源は全て貴重な序盤の兵站だ。まかりまちがっても建造で浪費してよいものではない。艦娘がいても出撃するだけの資源がなければゲームが進まない。
……というのは、先に進みゲーム攻略を進めることがこのゲームの意義だと思う場合だ。最初はエロ可愛い萌えキャラで釣るゲームと思ったくらいだ、艦娘たちはその方面の方々にとって、眺めてるだけで楽しいものだと思う。
そして先述の通り、艦これはゲーム攻略をきっちりしていこうとするとかなり難し目のゲームになる。普段ゲームなんてろくにしない、子供の頃、国産RPGくらいならやったけどさ、みたいな人がサクサク進めるとは到底思えない。というのにこのゲームすでに30万人やってて、まだまだ増え続ける様子という状態。
あれ? ハードコアなStrategy、意外と需要があった? とどこか勘違いしていっぱい作ってくれると嬉しいが、どう考えてもそういうことではない。
キャラクター自体に人気があり、ゲームを進めなくても建造という手段で入手が可能。これが、このゲームの人気を支えているもう一つの面だと思う。ゲーム攻略に挑戦し早々に撤退したとしても、ひたすら毎日の自動供給分の資源を建造に注げば艦娘を手に入れられる。そうして手に入った艦娘を愛でるだけのプレイヤーも十分な規模いると想像する。
艦これを始める前、やたらゲームとしての中身に対する批評を聞かない一方で、キャラクターの話はかなり見かけた。ゲームをやってないけど艦娘が気に入ったって人の声が大きい目なだけかもしれないが、Strategyとしてではなく艦娘を集めるゲームとして楽しんでる人も結構な規模いることを示唆している、そう感じる。
キャラクターを愛でるだけでも楽しめるStrategy、新しいよね。
『艦これ』はカジュアルなキャラゲーの皮をかぶった本格Strategy
まとめよう。
艦これはキャラゲーとして楽しむことも確かにできるが、それは上っ面だけであり、その中身はハクスラ並に追い込める育成要素が付与された本格Strategyだ。その本質は資源管理にあり、投入時間量よりプレイイングスキル、特に戦術眼と作戦立案能力が問われる、ハードコアなものだ。
特にStrategyゲーマー諸氏にはぜひ試して欲しい、しっかりとしたゲームだ。
ブラウザゲームのくせに、などと言わずぜひプレイしてみて欲しい。
あ、もちろん艦娘を愛でたいだけの人もぜひどうぞ。
PS.
イムヤ愛してる!