わかりやすいユーザーインターフェースと使いやすいユーザーインターフェース
Dragon's Dogmaのキャラクターエディットは大変良くできている、という話。
キャラクターエディット画面、というのはキャラクターエディットの自由度が高いゲームほど作るのが大変な部分だ。
なぜかというと、細かく調節して細部までユーザーの自由に調節できるほどキャラクターエディットの自由度が高くなるわけだけど、細かくあちこち調節できてしまうほどキャラクターエディット自体の難易度は上がってしまうからだ。
あなたは油粘土ひとつ渡されただけで自分の思い通りのキャラクターを形にすることができるだろうか?
まずこの段階でできるわけない、と降参する人が大半だろう。さらに、ここをクリアできる一握りの人にもまだ試練は続く。
あなたは触ると勝手に凹んだり膨らんだりする謎の物質を上手く思い通りの形に整えることができるだろうか?
さわり慣れたいつもの粘土なら上手くやれるだろう。でもどうすれば形が変わるのかからさっぱりわからない未知の物質でやれと言われたら流石にきついでしょう?
キャラクターエディット画面ってのは要するにこんな感じの問題を抱えるのだ。
すごく当たり前の話だが、キャラクターエディット画面はゲーム事に違う。世の中にキャラクターエディット画面の共通規格とか無いからね、ゲーム事に違うし、同じ会社のシリーズ物でもゲーム事に違うのが普通。
先の比喩で言うなら、与えられる素材が油粘土だったり石膏だったり割り箸だったり、とゲーム事に全く違うということ。
この手のキャラクターエディットが比較的得意な人でも、ひとつのゲームで思い通りの形にキャラクターエディットできるようになるにはそれなりの試行錯誤が必要になる。
それじゃキャラクターエディット自体が不得手な人は? なんのガイドもなく粘土を渡されても困るよね普通の人は。つまり、途方に暮れる。たいていはプリセットで適当な顔が用意されているので、ソレをそのまま使ったり、ちょこっとだけいじったりして使うことになるだろう。
つまり、キャラクターエディット画面には二つの要求項目があるということ。
- 思い通りに細かいところまで調節ができる自由度
- キャラクターエディットが不得手でもある程度の創造性を発揮できる簡便さ
この二つ、相反する項目で両立するのは不可能に思える。
しかし、優れたユーザーインターフェースとは常にわかりやすさと使いやすさ(とついでに見た目の良さ)を兼ね備えたものだ。キャラクターエディット画面にだって、そんな優れた正解があるはずだ。
あった。Dragon's Dogmaが証明した。
Dragon's Dogmaのキャラクターエディット画面は簡単に言うと、パーツの組み換えになっていた。眼や鼻といった部分にたくさんの選択肢が合って、ソレを大雑把に形を選んだ人形へとはめ込んでいく感じ。これならキャラクターエディットが不得手でもパーツを選ぶだけで自分だけのキャラクターが作れる。
だが、これだとキャラクターエディットが得意な人には物足りない。粘土で色々作れる人にプラモデルを渡すようなものだ。プリセットを細かく選べるだけじゃ創造性が発揮しきれない。……大丈夫。ちゃんと続きがある。
Dragon's Dogmaのキャラクターエディット画面はパーツごとのプリセットを選択して組み立てるものだったが、実はパーツを選ぶ所からさらにひとつ深い階層で細かい調整ができるようになっている。つまり、大雑把なパーツ選択が手前側、細かい調整がその奥でできるという作りになっていたのだ。
これは大変良くできた仕組みといえる。
最初から操作可能な全てが選択できると、初めて使うユーザーにとってはごちゃごちゃして見通しが悪い。だから触ってすぐ見える部分は可能な限り絞るのが使いやすいユーザーインターフェースの基本だ。
一方で、単に制限してしまうだけだとキャラクターエディットで作れるキャラクターの幅が大きく狭まってしまう。そこで、不慣れな人は見なくても良い”奥”に細かい調整をする部分を置いた。
これでわかりやすさを犠牲にすることなく、キャラクターエディットの幅を保てた。
Dragon's Dogmaのキャラクターエディット画面は、キャラクターエディットに心血を注ぐプレイヤー、キャラクターエディットなんかどうでもいいからさっさとキャラクターを決めて遊びたいプレイヤー、双方が問題なく使える優れた設計のユーザーインターフェースといえるだろう。
キャラクターエディットできるゲームは色々あるが、そのゲームに慣れるまでなかなか思い通りにいかないゲームが多いし、そもそも十分な調節ができないゲームも少なくない。Dragon's Dogmaのキャラクターエディット画面を見習って、もっと良い物が増えるといいし、Dragon's Dogmaのキャラクターエディット画面だって完全ではないから、さらに改良を加えていってよりよいものになって欲しいと思う。
(Dragon's Dogmaにとってはポーンのお陰でキャラクターエディットの重要性は他のゲームより高いことだし、ね)