絶賛墜落中の空中遊園地

大地とキスするまでに遊び倒せ

ポーン、Dragon's Dogmaの生み出した革命的新要素

Dragon's Dogmaにはポーンというシステムが有る。
簡単に言うと自分でエディットできる仲間NPCだ。自分の操作キャラと同じだけエディットが可能で、育成も自キャラと同じようにできる。単に自分では操作できず、自キャラについてきて自動で戦闘するNPCというだけで、事実上は同時に育てられる2キャラ目みたいな感覚だ。
さらにこのポーン、AIがよくできている。敵の特徴や弱点を覚え、知っている知識に基づいてアドバイスを喋ったり弱点を突く攻撃をするといった成長をする。ポーンも初見の敵には四苦八苦するし、慣れてくると上手い戦いをする。この成長過程が共に戦う仲間という感覚を強く持たせてくれる。
さらにポーンは貸し借りができる。他人のポーン二人を加え最大四人パーティーでプレイできる。経験を積んだ他人のポーンがいれば攻略は格段に楽になるし、よそのパーティに参加した自分のポーンはリムというゲーム内の特殊通貨を獲得してくる。自キャラとは別に自分の考えで育てたNPCを融通しあうことで擬似的なオンライン協力プレイができる。上手いデザインだ。
だが、ここまでだけならそれほど特別なことではないだろう。既存のNPC、その延長線上のものだからだ。極めて秀逸であるのは間違いないが、革新的とはいえない。
しかし、しかしだ。
ここに非同期オンライン要素を加える事で、革新的な変化が生じた。どんな変化か?
それは、自分のキャラクターがオンラインネットワークを通して他人の世界に勝手に潜り込むという点だ。



他人の世界に入り込んだポーンは、ゲーム内の普通のNPCのように街を街道をテクテクと歩く。街道で敵に遭遇すれば戦い始めるし、街では立ち止まって周りを眺めたり歩きまわって観光しているみたいだったり。その姿は当たり前に最初からいる普通のNPCだ。だが、その見た目はプレイヤーひとりひとりがエディットしたものだから千差万別。普通のゲームではなかなかできない様々な特徴を持つ。その結果、Dragon's Dogmaの世界は異様に華やかなキャラクターで溢れかえった。


もしかしたらこれは、NPCを十分な数揃えられなかったせいで行った苦肉の策だったのかもしれない。
しかし結果として『プレイヤーがエディットしたキャラクターが他人の世界に住むNPCとなる』という、シングルゲームにおける新しいオンラインプレイの可能性を掲示した。


キャラクターエディットができるゲームにおいて、キャラクターエディットとはそれ自体が一つのゲームとして楽しまれるレベルの要素だ。ゲーム本編そっちのけでキャラクタエディットだけに明け暮れるプレイヤーというのも、決して少数ではない。しかしその結果はスクリーンショットをとってネットで公開するくらいしかできず、少々物足りない。しかしそうやってエディットしたキャラクターが他人の世界に住み込むなら、その結果フィードバックをもらうことができれば。キャラクタエディットにも新しい楽しみが生まれるはずだ。
そうして本来静的な固定された世界を楽しむだけの普通のオープンワールドが、動的に変化する、プレイヤーごとに住んでるNPCが違う、そんな世界になるかもしれない。できるかもしれない。
そんな可能性を、ポーンは示したのだ。



Dragon's Dogmaに言いたいことはいっぱいある。そのほとんどは不満や愚痴や怒りだ。
しかし、それでもDragon's Dogmaは傑作だ。そしてその理由はアクションゲームとして秀作であるだけでない。ポーンというシステムで示した、今までにない新しいゲーム体験の可能性、それこそが理由だ。

ポーン、Dragon's Dogmaの生み出した革命的新要素。その秘めた可能性の凄まじさ、しかしかすかな光明にすぎないそれが、大きな輝きになる日を願ってやまない。