絶賛墜落中の空中遊園地

大地とキスするまでに遊び倒せ

Sacred2という傑作ゲーム

いわゆるRPGというゲームのジャンルにハックアンドスラッシュ(以下H&S)がある。
見下ろし型の俯瞰視点でプレイヤーキャラをリアルタイムに操作し、クリックで移動や攻撃をするゲームであることが多い。
が、H&SをH&Sたらしめるのはそこではない。敵を倒すことでアイテムが手に入り、そのアイテムに無限のバリエーションが存在し、優れたアイテムを求めて延々と戦闘を繰り返してしまうゲーム。
それがH&Sだ。
別にいわゆるクリック系RPGじゃなくてもH&S足りえる。ぱっと見がFPSに見えるBorderlands2というH&Sもある。



さて、いわゆるクリック系RPGなH&SにSacred2というゲームがある。
潰れてしまったアスカロンというドイツのメーカーが作ったゲームで、あちこち大味でボリュームがむやみに多くバランスが大雑把というゲーム。発売も2009年でそれなりに古ぼけてきたゲーム。



だが、傑作だ。



Sacred2というゲームの優れている点は二つ。UIと成長デザインだ。

特にUIは気合を入れすぎていて、最初に発売されたパソコン版ではパソコンゲームとしてマウスとキーボードを使って操作するゲームとして完璧といって良いUIだった。
だというのにその後発売されたxbox360版ではコントローラーでの操作に合わせて完全に作り直されており優れた操作感を持っていた。
完璧といってよいUIもプラットフォームごとに最適化しなければあっという間にごみになる。この最適化部分、サボるメーカーばかりでちゃんと機種ごとに調整するメーカーは稀だ。
そんな中、Sacred2は調整するどころかまるごと作りなおしてあるというとんでもなさだった。そんなことしてるから潰れたんじゃないのかアスカロン。かけたお金は割りにあったのか心配になるぞ。
とにかくSacred2のUIは機種ごとに作りなおしてあるレベルで完全だった。ただ操作性はコントローラーを用いるxbox360版、UIの見やすさや使いやすさはPC版にそれぞれ軍配が上がる。

PC版のUIの見やすさや使いやすさは本当に素晴らしい。
アイテム・装備欄とキャラクターステータス欄とコンバットアーツ(:このゲームにおける攻撃技)の管理欄が独立しており、一つだけ立ち上げると中央に立ち上がり同時に立ち上げると並んで表示されるという点がその一例だ。
また立ち上げた画面で大体の情報が俯瞰できるようになっていて、細かい情報はカーソルを合わせると立ち上がるポップアップで読めるようになっている。
痒いところにはすぐ手が届き、細かいところまでパッと見で把握できる一覧性を兼ね備えるこのUIは今でもPCゲームUIの最高峰だと思っている。


Sacred2でもう一つ優れている点が成長デザイン。
このゲームはとりあえず数値を増やし新しいスキルや技を手に入れていけばどんどん強くなっていく単純なインフレ構造の成長デザインになっていない。

例えばコンバットアーツ。このゲームでは伝統的なH&Sと同じで通常攻撃などは基本使わず、鍛えた使い勝手のいい技を連発して戦うのが基本戦術となる。例えばエルフなら氷の槍を前方へ扇状に放つグレイシャルスピアというコンバットアーツを連発して戦うのが基本になる。
このコンバットアーツ、覚えるため、あるいは強化するためにはそのコンバットアーツに対応するルーンというアイテムを手に入れる必要がある。アイテムなのでこれも普段の戦闘で手に入れるがそれなりに貴重で数を揃えるには少々の根気を要する。知らないコンバットアーツのルーンなら技を新たに覚え、既に習得済みのルーンなら対応するコンバットアーツを強化する。強い敵と戦うにはメインで使うコンバットアーツも相応に強くする必要がある。初心者が対応するルーンをどんどん使ってしまうのも仕方がない。
しかし前述のとおりこのゲームの成長デザインは単純なインフレ構造ではない。
ルーンを使ってコンバットアーツを強化すると、確かに性能が上がる。威力や付随効果の性能向上が得られる。しかし、それと引き換えにチャージタイムが伸びてしまうのだ。それも、劇的に。

Sacred2のコンバットアーツは全て、MPといった使うために必要なリソースを持たない。いつでも使うことができる。代わりに、一度使うと暫くの間使えなくなるチャージタイムが設定されている。チャージタイムが長いと連発できないが、一秒未満のチャージタイムなら事実上連打し放題になる。メインで使うコンバットアーツは連発できる状態に保たないとメイン攻撃手段足り得ない。
威力とチャージタイム、この二つの兼ね合いが難しいのだ。あちらを立てればこちらが立たず。

こういった要素がSacred2にはあちこちに用意されている。

例えばエルフなら氷のコンバットアーツを強くするスキルを取ると炎や魔法属性のコンバットアーツは弱くなる。
プレイヤーは自分のキャラクターを育てるに辺り、常に取捨選択の決断を迫られる。複数の技を使えるようにすれば思いもよらない戦術ができるようになるかもしれない。しかしたった一つの種類に絞ったキャラクターの戦闘力には大きく劣ってしまう、かもしれない。
スキルを取り直したりコンバットアーツに使ったルーンの数を減らしたり、といったことはできない。そのため手探りでキャラクターの成長方針を決めるのは、なかなか歯ごたえがある。


なにも考えず数値を増やせばいい単純なRPGよりずっと面白い。




ただ困ったことにSacred2、無駄に長大だ。
さまよえる世界はかなり広く、メインシナリオをクリアするまでにかかる時間も結構なものだし、あちこちにあるメインシナリオと関係ないクエストや場所をフォローしていくとあっという間に50時間くらいすっ飛ぶ。
だというのにゲームの難易度が5段階もあり、メインシナリオをクリアしないと上の難易度に挑戦できない。一番簡単な難易度より一つ上からスタートすることは可能だが、それでも3回メインシナリオをクリアしないと最高難易度に挑めない。H&Sにおける最大の楽しみは敵をガンガン倒して強いアイテムを手に入れることだから、最高難易度にたどり着かないと始まらない。しかしその最高難易度までが、ちょっと遠すぎる。難易度こんなに要らないよ。

さらに、経験値。
このゲーム、キャラクターのレベルは200が最高だが、レベルが100にもたどり着かない辺りからレベル上げが苦しくなり、150を超えると経験値ブーストの装備で全身を固めても心が折れる時間レベリングに励まないといけないバランスになっている。
レベルキャップ高すぎる。強いキャラクターに育成するスキルやコンバットアーツの取り方をすればレベルは100なくても最高難易度でラスボスを倒せるので、なおさら最高レベル200は高すぎると感じる。


さらに困ったことに大雑把なのだ、このゲーム。
コンバットアーツやスキルに、最高難易度ではどうあがいても通用しないだろうという弱すぎるもの、いわゆる”地雷”が多すぎ……いや、言い換えよう。沢山の種類のスキルとコンバットアーツが複数いるキャラクターごとにそれぞれ用意されているけれど、そのうちレベル上に苦慮しない段階で最高難易度にいける組み合わせはかなり限られ、ある程度レベルを上げればなんとかなるものでも選択肢は少ない。
これを一切攻略情報を見ないで自力攻略で見出すのは無理だよ。しかしこの手のゲームで試行錯誤をせず攻略情報を見てその通りに育成するなら面白さの大部分を失ってしまう。
明らかな設計ミスというか矛盾点だ。


なんのために優れた成長デザインを採用したんだ。しっかりしてくれ。



そんな訳で最高難易度に突入した辺りで力尽きてプレイを中断したまま今日に至る。
いや、400時間ほどプレイしたセーブデータがxbox360のHDDから消えてしまったというアクシデント(ゲームのバグ?)があったというのもあるけどね。
PC版で改めてプレイしようと思いつつインストールして動作確認した所で止まっている。Sacred2のあまりに長大過ぎるボリュームに、その物量に立ち向かう気力が再びわかない。困ったものだ。



それでも400時間が輝いていたSacred2のプレイは面白いものだったし、他にないプレイヤーに決断(とその結果)を背負わせる成長デザインは素晴らしいものだ。今でもその評価は揺るがない。Sacred2というゲームは傑作だ。

潰れてしまったアスカロンのメンバーは今は別の会社でSacred3を作っているらしい。今度は潰れないよう上手いお金の使い方をしつつ、優れた成長デザインやUIを継承しつつ、無駄じゃない範囲のボリュームを持つゲームに仕上げてくれることを願う。


アスカロンよ永遠に!

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