Focusrite VRM BOX が想像以上に使える
Focusrite のシンプルなオーディオ・インターフェースに VRM BOX というのがある。Focusrite ってのは割りと高性能なDTM・宅録向けのオーディオ・インターフェースを作ってるメーカーだ。
で、この VRM BOX はUSB入力とコアキシャル入力にヘッドフォンアウトだけというシンプルなPC用DAC内蔵ヘッドフォンアンプだ。ASIO ドライバもあるのでソフトウェアで完結するDTMにも使えるけど、どっちかというと聞くだけの人が使うと便利か。定価が12,000円、実売が5000円と割と低価格。
この商品、ヘッドフォンでスピーカーの視聴環境をエミュレートする VRM という機能が売りで、製品のホームページでも詳しい解説がある。
……という話を聞くと、オーディオの人も音楽制作する人も一様に顔をしかめて地雷商品だと判断するだろう。控えめに言っても冗談の産物だと思われる機能がついた単機能オーディオ・インターフェース。当然、基礎性能にも期待できない……という判断は実に常識的でまったく責める気はない。かくいう自分も5000円ならとノリで買ったし。
しかし、しかしだ。
意外や意外、VRM BOX はDACとして、ヘッドフォンアンプとして、かなり強力な性能を持っている。VRM なんか切って普通に使えばかなり強力なDAC、およびヘッドフォンアンプだ。もしかしたら Focusrite の VRM がついてるインターフェースからDACとヘッドフォンアンプだけそのまま持ってきたのかもしれない。
ともあれ、出音はかなり良い。
音の立ち上がりが速いし、輪郭もくっきりしてる。その上で音楽制作向けのインターフェースを作るメーカーらしく、素直な出音。モニターを繋げばちゃんとモニターなフラット目の音がなる。
正直、購入価格からすると信じられない性能だ。費用対効果という点では抜群。いいヘッドフォンを買ったけどアンプにお金かける余裕ないなぁ、という人はぜひ検討して欲しい。インピーダンスが高いQ701もちゃんと鳴らせるし。ボリュームはかなり大きめにしないといけないが。
それに小型で軽い上にバスパワーで動くので、持ち歩き用のノートパソコンに使うことも可能だ。出先でなにか聞く必要のある人は検討する価値がある。
あと、冗談の産物だと思われた VRM も冗談程度には使える。
どう考えてもスピーカーを鳴らしたほうがいいのは間違いないが、一方でヘッドフォンとスピーカーの差異をある程度再現しているのも確か。慣れれば、VRM を併用してヘッドフォンだけでミックス・マスタリングを仕上げることも可能かもしれない。
怖くてやる気はないけれど。
ここまでべた褒めだが、1個だけ不満がある。
ウチの環境問題の可能性はあるが、使用中に脈絡なく突然音が鳴らなくなるトラブルが多発しているのだ。音楽を聞く時に使っているのだが、良い音楽を聞いてノッて来てる時にブツっと音が消えたり甲高いノイズが鳴り続ける状態になると大変腹ただしい。
まぁ、その度にUSBケーブル抜き差しすれば復活するので我慢して使っているが(我慢して使う程度に出音は良い、やはり)。
Focusrite のドライバにはなんとなく良いイメージがないのだが、この件により引き続き良くないイメージが付きまとうだろう。
(13.8/29追記)
最近安定している。ドライバ更新などはしていないので、どうやらVRMBOX以外の要因で不安定だった模様。不適切な記載であった、陳謝。
(追記ここまで)
Focusrite VRM BOX、冗談で安物を買ったつもりが意外な大当たりという珍しい事例になった。この値段なら音楽を聞く時の機材に無頓着な向きにも勧められるしね。
もし興味が湧いた人はぜひ使ってみて欲しい。ちゃんと VRM は切って、ね。